カンボジアにおける農業保険の普及と課題ーーカンボジア農業保険市場シリーズ(2)

2.1  Forte Insuranceの先駆的地位

カンボジアの農業保険市場において圧倒的な存在感を示すのがForte Insuranceである。同社は2015年7月、バッタンバン州ベルおよびバナン地区でコメ保険のパイロットプロジェクトを実施したのが農業保険の先駆けとなった。これはカンボジア初の農業向けマイクロ保険商品であり、ゴム・トウモロコシ・キャッサバ等の作物保険に続くラインアップ拡充の一環として展開された。

Forte Insurance CEOのSuy Channtharong氏は「農家の最大課題はモンスーンの気まぐれな降水量。農業保険はそのバッファーとして機能する」と強調する。現在、同社のマイクロ・農業保険部門がWICI事業を主導しており、2024年時点のカバレッジは76,000人・77,000ヘクタールに達している。

指標2023年2024年前年比
加入農家数54,800人76,000人超+38.7%
カバレッジ面積120,000ha(計画)77,000ha(実績)対象省拡充中
保険金支払農家数約10,000人El Niño影響で増加
対象省バッタンバン、カンポントム、プレイヴェン同上(全国展開計画中)
保険料$10/ha(農家負担$5)同上変更なし
最大保険金$100/ha同上変更なし

2.2  その他の農業保険プレーヤー

Forte Insurance以外では、CVI(Cambodia Vietnam Insurance)がMAFF傘下の農業協同組合Angkor Milkと連携した作物保険商品(CROP Insurance)を提供し、BIDC銀行との3者間MoUを締結している。

2015年には非営利組織CEDACがAchmea財団(オランダ)から96,000ドルの支援を受け、カンボジア農業協同組合保険会社(CACIC)を設立し5省でパイロットを開始した。しかし技術人材不足・農家の保険理解不足・保険料支払能力の問題から規模拡大には至らず、初期モデルとしての意義を残すにとどまった。

*地図中の緑色で示した地域はコメの主要生産地域を示す。

InsurTech動向

カンボジアのFinTech・InsurTech分野は急速に成熟しつつある。マイクロファイナンス機関のAMRET(アムレット)は2024年にSMEファイナンスフォーラムに加盟し、モバイルチャット経由でのオンボーディングを可能にするSaaS型プラットフォームを導入。モバイルペイメントインフラの整備が農業保険のデジタル分配を後押しする環境が整いつつある。

保険監督計画2025-2030においてもデジタルチャネルの多様化と保険リテラシー向上が明示的に優先事項として掲げられており、バンカシュアランス(保険付帯型銀行サービス)の普及が次の成長ドライバーとして期待されている。

2.4  農業保険普及率の現況と課題

2022年のカンボジア全体の保険普及率(GWP/GDP比)は1.17%にとどまり、農業保険の普及はさらに限定的である。WICI導入初期(2021年)における農家の加入率は低水準に留まり、損失率は200%を超えた。損失率の高騰はWICI制度の財務的持続可能性に根本的な問題を提起している。

低普及率の主因として研究者らは以下を挙げる:(1) 農家の保険制度に対する理解不足、(2) 気象観測所への信頼欠如(ベーシスリスク問題)、(3) リスク回避傾向の強さ(リスク選好ゲームで5段階中高い回避度)、(4) 農村部での情報伝達インフラの脆弱性。

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