政府戦略:保険セクター戦略計画2025-2030
1.1 保険監督機関(IRC)の規制フレームワーク
カンボジアの保険産業はInsurance Regulator of Cambodia(IRC)が規制・監督を行う。IRCは2021年9月に「カンボジア保険セクター開発戦略計画2021-2030」を策定し、非銀行金融サービス機関評議会(NBFSA)において承認した。その後、2026年4月にはより具体的な「カンボジア保険セクター戦略開発計画2025-2030」が公表・普及された。
*IRC(Insurance Regulator of Cambodia:カンボジア保険規制局) カンボジアの保険・私的年金業界を規制・監督する非銀行系金融当局。以下、本稿ではIRCと略す。
*NBFSA(Non-Bank Financial Service Authority:非銀行金融サービス機関評議会) 銀行以外の金融サービス(保険・リース・証券等)を統括する規制評議会。IRCはその傘下機関として位置づけられる。
2025年現在、カンボジアの保険市場には112の認可事業体が存在する。内訳は保険会社39社(一般保険18社・生命保険14社・マイクロ保険6社・再保険1社)、仲介業者64社(うちブローカー21社)、保険サポートビジネス9社である。業界の総資産は2021年の約8.5億ドルから2025年には約13億ドルへと急成長した。

1.2 農業保険への政府補助金制度
農業保険における補助金の中核は、財務経済省(MEF)主導の天候指数農業保険(WICI:Weather Indexed Crop Insurance)スキームである。同スキームにおける保険料はコメ1ヘクタールあたり10ドルに設定され、そのうち5ドルをMEFと旧コメセクター開発プログラム(Rice SDP)が、残りの5ドルをForte Insuranceが負担する50:50の費用分担モデルを採用している。農家の自己負担は実質5ドルであり、100%の補助という見方もある。
*WICI(Weather Indexed Crop Insurance:天候指数農業保険) 降水量等の気象指数が事前設定の閾値を超過または下回った場合に、実損査定を経ずに自動的に保険金が支払われるパラメトリック型保険。物理的な損害査定が不要なため、遠隔地の小規模農家への迅速な支払いが可能となる。
*Rice SDP(Rice Sector Development Program:コメセクター開発プログラム) MEFが主導し、ADBおよび開発パートナーの支援のもと実施されたコメ産業の商業化・輸出振興プログラム。同プログラムの枠組みの下でWICIの保険料補助金が拠出された。
最大保険金額はコメ1ヘクタールあたり100ドルで、農家の平均耕作面積(0.5〜2ヘクタール)を鑑みれば、中規模農家には実質的なリスクバッファーとして機能する。MEFプロジェクト管理局は同スキームが「気候適応型農業」の実現と「農地の計画的利用・農村経済機会の拡大」に資するものとして位置づけている。

1.3 MAFFの農業開発政策との連携
農林水産省(MAFF)は国家農業開発政策(2022-2030)を通じ、コメ・カシューナッツ・キャッサバの3バリューチェーンを優先対象に指定している(FAO Hand-in-Hand Initiativeに基づく)。農業保険はこれらの高付加価値作物への転換を後押しするリスク管理ツールとして位置づけられ、IFADとEIBが共同出資するASPIRE-AT(農業総合サービスプログラム)においても農業協同組合(AC)育成と並んで重点施策に挙げられている。
*FAO Hand-in-Hand Initiative FAOが主導する農業投資・バリューチェーン強化のための地域横断的プログラム。カンボジアにおいてはMAFFとの協議を経て、コメ・カシューナッツ・キャッサバの3品目が優先的な投資対象バリューチェーンとして指定された。
*ASPIRE-AT(Agriculture Services Programme for an Inclusive Rural Economy and Agricultural Trade) IFADと欧州投資銀行(EIB)が共同出資し、MAFFが実施する農業総合サービスプログラム。農業協同組合の組成・市場アクセス改善・農業バリューチェーン統合を3本柱とし、2023年より本格稼働している。

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