農業保険の制度設計・技術革新・金融インフラ機能に関する多角的分析と政策提言
カンボジアの農業部門はGDPの約23%を占め、農村就業人口の77%が農林水産業に従事するきわめて重要な産業である。しかしながら、洪水・干ばつ等の気候リスク、アフリカ豚熱(ASF)・口蹄疫(FMD)等の家畜疾病リスクが農家の所得安定を大きく脅かしており、マイクロファイナンス機関(MFI)の不良債権率を押し上げる構造的問題となっている。
本リサーチ・シリーズは以下の8つの研究設問を軸に、(1) 政府の保険戦略(保険セクター戦略計画2025-2030)、(2) 民間保険市場の動向、(3) 気候・疾病リスクの損害統計、(4) 衛星・AWS・RFID等の技術統合、(5) 保険とMFI融資の相互連関、(6) 国際援助プロジェクトの成果、(7) SME農家のケーススタディ、(8) 再保険市場と法規制上の課題について体系的に分析する。
*AWS(自動気象観測所:Automatic Weather Station) 人が常駐せずに気象データを自動収集・送信する観測装置。観測値が事前設定の閾値を超過または下回った場合に、保険金支払いのトリガーとして機能する。
*RFID(無線周波数識別:Radio Frequency Identification) 電波を利用してタグの情報を非接触で読み取る技術。家畜の耳等にタグを装着し、出生から死亡までのライフサイクルをデジタル管理することで、不正請求の防止と保険金の迅速支払いを両立させる。
| 主要調査結果サマリー |
| ◉ 保険セクター戦略計画2025-2030:保険密度を現行$20.95/人から2030年までに$45/人へ引き上げ、GDP比率を1.11%から2%へ拡大する目標を設定 |
| ◉ Forte Insurance主導のWICI(天候指数農業保険):2024年時点で76,000人超の農家が加入、77,000ヘクタールをカバー。バッタンバン・カンポントム・プレイヴェン3省に集中 |
| ◉ 2022年の農業保険普及率:1.17%と極めて低水準。損失率は200%超と高く制度の持続可能性に課題 |
| ◉ カンボジアのMFI総債務額:2024年時点で約180億ドル(3.1百万件)。世帯当たり平均借入額5,800ドルは年間中央値所得の4倍超 |
| ◉ 洪水被害:2009・2011・2013年の大洪水で合計10億ドル超の農業損害。2018-19年干ばつでは324,641ヘクタールのコメ作付地に甚大な影響 |
| ◉ WICI技術基盤:23カ所の地上気象観測所とCHIRPS衛星降水量データを組み合わせたハイブリッドシステムで自動支払いトリガーを実現 |

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