3.1 洪水被害の統計
カンボジアはアジア太平洋地域で最も自然災害リスクが高い国のひとつであり、気候変動の影響により洪水・干ばつの頻度と強度が増している。UNDPの統計によれば、2005年から2012年の間にカンボジアでは100万人当たり22,695人が自然災害の影響を受けた。
| 年 | 被害種別 | 主な影響 | 経済的損失 |
|---|---|---|---|
| 2009年 | 大洪水 | コメ作付地広域浸水 | 10億ドル超(2009・2011・2013年合計) |
| 2011年 | 大洪水 | 461名死亡 | 同上 |
| 2013年 | 大洪水 | 農業インフラ壊滅 | 同上 |
| 2015-16年 | 干ばつ | 18省で影響、250万人被災 | 農業GDP比約20%減少 |
| 2018-19年 | 干ばつ | 16省で宣言 | コメ324,641ha・その他農作物44,734ha被害 |
| 2024年 | 洪水 | バッタンバン等主要農業省 | WICIの保険支払いが急増 |
環境省の推計では、気候変動はカンボジアのGDPを2030年までに年間1.5%、2050年までに3.5%押し下げると試算されており、農業部門への打撃は特に深刻である。コメ農家の損失原因の70%が洪水、20%が干ばつに起因するとされる。
3.2 干ばつの影響
過去の主要干ばつ事例を分析すると、1998年と2002年の干ばつが農業GDPを約20%減少させ、国民の半数超に影響を与えた。2004年の深刻な干ばつでは3,000km²のコメ水田が被害を受け、潜在的なコメ生産量の82%が失われた。2009年の干ばつでは12百万ドルの被害軽減費用が投入された。
「バリボ盆地の干ばつに関する農業・食料安全保障への影響」(Water誌、2024年)の研究によれば、1985年から2008年の期間においてSPI(標準化降水指数)とSVI(標準植生指数)を用いた分析で、農業部門の脆弱性が定量的に確認されている。
3.3 家畜感染症(ASF・FMD)の農業経済への影響
アフリカ豚熱(ASF)は2019年以降、東南アジア全域に拡大し、カンボジアの養豚業に甚大な打撃を与えている。研究によれば、ベトナムでは感染拡大後最初の5か月間で豚の20%が死亡または淘汰され、経済損失は8.8億〜44億ドルに達した。中国では10年間で1,119億ドル相当の被害が生じた。
カンボジアおよびラオスの小規模養豚農家を対象とした2023年のKAPサーベイ(Agronomes et Vétérinaires Sans Frontières実施、カンボジア188人・ラオス283人対象)によれば、低バイオセキュリティ・放し飼い慣行・獣医師の不足という三重苦がASFへの脆弱性を高めている。調査対象農家の56%が女性であり、農村女性への経済的打撃も深刻である。

3.4 農家所得とMFI債務への影響
農業損害は農家をMFIの「債務スパイラル」に引き込む主要因となっている可能性がある。農家は収穫損失の補填のためにMFIから追加借入を行い、次の作付シーズンの原資確保のためにさらなる借入を重ねる。
カンボジア・マイクロファイナンス協会(CMA)とM-CRILが2024年に実施した3,262世帯調査では、借入者の87%が1〜2件のローンを抱え、2.1%が4件以上の多重債務状態にあることが明らかになった。また2019年にはカンボジアは世界最高の1人当たりマイクロファイナンス債務国となり、2024年時点で3.8百万世帯が3.1百万件・計180億ドルの債務を抱えている。1件当たり平均借入額5,800ドルは、2023年の1人当たり年間中央所得1,400ドルの4倍超という异常な水準である。

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