カンボジア工業特区、農村賃金に二極化 

移住者と地元住民で逆効果

カンボジアの特別経済区(SEZ)が周辺農村の賃金に与える影響は、労働者の出身地によって正反対に分かれることが、Cambodia Economic Research Centerの調査で明らかになった。地元に定住する非移住者の賃金はSEZ省で約32%高い一方、他省から流入した移住者は逆に約30%低く、平均すると有意な賃金上昇は確認されなかった。

調査は2019〜2020年のカンボジア農村就業者1167人の個票データを分析した。SEZ省とは、スヴァイリエン、バンテイミアンチェイ、カンダル、カンポット、コッコンの5省を指す。

*カンボジアのSEZの分布図

賃金上昇が平均でゼロに近い理由は「弾力的な労働供給」にある。SEZへの工場進出が雇用需要を押し上げると、より低い賃金でも就労を希望する貧困省からの移住者が流入する。競争激化が賃金上昇を抑制し、地元住民の恩恵を打ち消す構図だ。

サブグループ別では、SEZ省の女性が38%、30〜49歳の中年層が40%の賃金プレミアムを示した(いずれも統計的に有意)。縫製・軽工業が女性労働力を優先採用する傾向が背景にある。

政策面では、移住を促す寮の拡充や移動コストの補助は賃金格差をさらに拡大させるリスクがあると研究は警告する。一方、農村からSEZへの通勤インフラ整備や地元女性向けの技能訓練は、地元住民が賃金上昇を享受できる手段として有効だとしている。

研究の限界としては、クロスセクションデータのみで因果関係の特定が困難な点が挙げられる。今後は2014〜2023年のパネルデータを用いた差分の差分(DID)推定による検証が課題だ。

コメントを残す

cerc-cambodiaをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む